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 育児と言えば、たいていは母親によってなされると思われています。(中略)
 ところがライオンはちょっと違います。同じ群れのライオンは、そろって出産する傾向があり、育児も群れの雌 全員が協力して行うのです。赤ちゃんは生まれて一か月あまりは物陰に隠され、母親だけで育てられます。しかし、歩けるようになると、群れに連れてこられて共同生活が始まります。
 ライオンの群れには複数の大人の雌がいますから、それらの子どもたちが集まって、大所帯となります。集められた子どもたちは、自分の母親以外のライオンの乳も飲むことができ、群れの全員の保護を受けることができます。捕食獣(注11)であるライオンは、子育て中も獲物狩りに出かけなければなりません。母親一頭で子育てをしている場合には、外出中に、ハイエナ(注2)などに子どもが捕食される危険があります。しかし、共同育児をして誰かが子とものそばに残っていれば安心です。
 若い雌ライオンは敏捷(注3)ですが、子育ての経験に乏しく、失敗することもよくあります。それに比べ、壮年期になったライオンは経験豊富で態度もどっしりとして子育ても上手です。長の雌がまとめて面倒を見た方が育児はうまくいくかもしれません。反面、若いライオンの敏捷性は狩りでは有利に働くでしょう。ライオンは狩りも共同で行い、獲物はみんなで食べますから年老いて狩りに参加できなくても、食事をとることができるのです。
 ライオンたちは、明確な分業とまではいえなくても、うまく育児と狩りを全員が協力することで、問題を解決しています。

1。 (49)ライオンの子育てについて、筆者はどのように述べているか。

2。 (50)共同生活の利点について、筆者はどのように述べているか