以下は、小説家が書いたエッセイである。
 言い方は重要です。言い方をいくつも、持つことによって反論のパターンを練習することをお勧めします。
 「あなたの言っていることは違う」とか、「矛盾している」とかいう発言は、アメリカ映画ならよく観るシーンですが、日本の現実社会では、ある意味、相手に喧嘩を売っているように聞こえます, 関係性を破壊することに(41)。
 そもそも、違う意見が言いにくい空気感が日本にはあります。そのとき、何が大事か。 言い方です。すべてが言い方(42)と言えます。中高生とは違う、大人の議論力が求められます。関係性というものを維持しながら、あるいは、良好に保ちながら、話を進めます。
 違う意見がある場合は、たとえば「部長の意見はどもっともだと思います。 ちょっと視点を変えてみますと、こういう見方が(43)」と、相手をまず立てることがポイントです。言い方に文句を言うのは、 日本人の悪癖(注1)だと思いますが、あえて反感を買うような言葉遣いで、自分の意見が通らなくなるのは得策(注2)ではありません。
 言い方についての例を紹介します
 「『俺は飯を作ってもらっても嫁さんにありがとうなんて言わない』って豪語する(注3)上司に、 社会勉強でOLしている良い所のお嬢様が『ご両親にマナーを躾けてもらえなかったんですか?』って無邪気に返されて、亭主関白(注5)からた(注4)だの育ちの悪い男に落とされたって話を友人から聞いて爆笑じております」
 自信たっぷりに豪語する上司は、普段、結構、部下に強いところを見せていると推測されます。(44)、部長のスタイルであり、価値がそこにあるのです。それをいとも簡単に部長とは視点のまったく違う、悪気のない「お嬢様」(45)アッサリと否定されてしまっているところに、切り返しの面白さがあります。また、見逃してならないのはお嬢様の言い方です。悪気のない言い方なので、部長は文句を言えませんでした。
(注1) 悪癖 : 悪いくせ。よくない習慣
(注2) 得策 : うまいやり方
(注3) 豪語する:自信満々に大きなことを言う
(注4)躾ける : 行儀などを教える
(注5) 亭主関白 : 家庭内で夫が妻に対して支配者のようにいばぱっていること

1。 (41)

2。 (42)

3。 (43)

4。 (44)

5。 (45)