(1)
火を使って調理をするようになってから、人類はそれ以前よりも多くの種類の食べ物を食べられるようになり、しかもそれを効率よく消化して多くのエネルギーを得ることができるようになった。そして、余ったエネルギーを使って脳を発達させて、優れた知的能力を獲得することになるのである。人類の歯、顎、胃、小腸、大腸などはチンパンジー(注)などに比べればはるかに小さいが、それは火を使って調理した柔らかい食物に適応して進化した結果であると考えてよい。
大きな消化器官を使って長時間の消化、吸収活動を行うことは多くのエネルギーを消費するから、消化器官が小さいものが生物学的に有利である。
(中略)
火で調理することには、人類の脳を発達させただけではなく、人類の社会性を発達させる効果もあった。火を使って調理することが人類の偉大な発明の一つとされているのは、食べ物を変質させただけではなく、社会を変容させたからである。火を使って生の食べ物を調理することを覚えたときから人類の社会が始まったと言ってよい。人々は焚火の周りに集まり、一緒に食事をするようになったので、そこが人々の結びつきの場となった。調理とは、単に食べ物を煮炊きする方法ではなく、決まった時間に集団で食事をすることを中心にして社会を形成する方法でもあったのである。
(注)チンパンジー:猿の一種

1。 (49)筆者によると、火で調理することで人類の脳が発達したのはなぜか。

2。 (50)筆者は、火を使った調理は人類にどのような変化をもたらしたと述べているのか。