(1)
相手に向かって否定的な言葉を発するばかりが、否定的な表現ではない。
我々は相手によっては、あからさまに否定することができない局面をたくさん持っている。(中略)
私たちは、他人の話を聞くときに、同意していようがいまいが、多少は頷かなければならない。しかし、頷いているからといって、必ずしも同意しているわけではない。そのことを表現したいときにはどうすべきか。①
そんな時は、間や話の切れ目に関係ないところで頷くのである。相手の流れと無関係に頷けば、本当に頷いたことにはならない。
また、「同意の頷き」は過不足なく行われる。「頷かない」のも否定なら「頷き過ぎ」も実は否定であることが多い。「ハイ」と一回返事すれば同意だが、「ハイハイ」ならば不承不承というのと似ている。
目安でいうと、四回以上続けて頷くと「否定」である。政治家の討論番組などを見ていると、野党の議員が喋っている間中、与党の議員が②
頷き続けていることがある。これは実は相手の話をまったく聞いていないということになる。「ハイハイ、あんたの言うことはいつもそればっかりだ。わかってますよ」というメッセージなのである。
(竹内一郎『人は見た目が9割』新潮新書刊)