(2)
(前略)失敗への最善の対処法は、やはり起こる前から準備すること、これに尽きます。
(中略)
 これから起こる可能性のある失敗について考えるとき、ふつうは時系列(注1)や原因から結果という因果関係に従って、「どんなときにどんな失敗が起こり得るか」を想定します。
 ①「逆演算」の場合は、これは反対のものの見方をします。まず具体的にどんな失敗が起こるかという結果を思い浮かべて、そこから遡りながら、その失敗を誘発する原因を検討していくのです。
 もちろん、失敗のシナリオは、原因から結果を見ていく順方向の見方を使っても考えることができます。しかし、この方法では起こり得るすべての可能性を、同じような価値のものとして検討していかなければならないので、莫大な作業が必要となり、結果として必ず②想定漏れの問題が出てきます。
 これに対し「逆演算」の見方だと、最初に具体的な結果を想定して、そこから遡って原因を考えることができるので、真っ先に自分が一番避けたい大きな失敗をピックアップする(注2)ことができます。
 つまり、逆演算を使うことで、自分が最も起こってもらっては困ると考える致命的な失敗をまず検討できるのです。まず重大な失敗を想定し、それが起こり得る状況をつぶさに(注3)検討することで、仮に失敗した場合でも被害を最小限に抑えることも可能なのです。

(畑村洋太郎『回復力 失敗からの復活』講談社現代新書による)


(注1)時系列:時間の経過の順に物事を考えること
(注2)ピックアップする:選び出す
(注3)つぶさに:細かく、詳しく

1。 (53)①「逆演算」の場合、最初に考えることは何か。

2。 (54)②想定漏れの問題が出てくるのはなぜか。

3。 (55)ここで筆者が述べている「失敗への対処法」とはどのようなことか。